お香は何で作られているの?お香の原料について
お香というのは基本的に自然由来の原料を使用して作られます、単一の素材で作られるお香だけでなく、様々な原料を配合することで多種多様な香りを生み出し、世界各地のお香文化とともに成長を続けてきました。
一般的にお香は基材に香料を混ぜて製造され、その原料となる香料には植物性のものと動物性のものが使用されており、沈香や麝香といった人工的には増やせない香料を原料としたお香まで様々なものが存在しています。
今回は、そんなお香に使用される原料についてどこよりも詳しく解説していきます。
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お香の基本原料素材(基材)
基材というのは、お香の匂いを構成する基本原料素材のことです。
基材に対して様々な香料を配合することでお香は作られています。
椨(たぶ) / タブノキ
最も多くのお香に使用されているクスノキ科の植物、別名イヌグスと呼ばれており、ダブノキの樹皮を粉にしてお香の基材に使用します、なぜダブノキが多くのお香の基材になっているのかと言うと、原料の中でも香りが少なく、配合する香料の匂いを邪魔しないという特徴があるからです。
白檀(びゃくだん) / サンダルウッド
高級なお香の基材にはダブノキ以外にも白檀(サンダルウッド)が使用されます、インドネシアやマレーシアなどで栽培されており、非常に香りの良い基材として愛されています。
炭粉末 / チャコールパウダー
木炭などを粉々にしてパウダー状にしたものです、煙の少ないお香の基材として使われており、インド式のお香では最も定番の基材として広く使われています、火をつけたときにススが出やすいのが難点です。
香木系のお香の原料
原料そのものに芳香がある木を香木という名前で呼んでいます。
お香に使用される原料の中でも伝統的な原料とされており、お香の中心的原料といっても過言ではありません、日本で最も使用されている香木系の原料は「沈香」であり、日本の香りと言えるほど広く親しまれています。
白檀(びゃくだん) / サンダルウッド
基材の項目でも紹介しましたが、香木系の原料として世界的にポピュラーな物が白檀です、ソフトな甘さとウッドノート系のバルサミックな香りを持っており、インドのマイソール州で産出される白檀はロウザンビャクダンとも呼ばれ最高級品のお香に使用されている原料です。
沈香(じんこう) / アガーウッド
沈香は沈水香木の略称、「水に沈む香りのする木」という意味であり、様々な外的要因によって木質部分に樹脂が凝結することで、樹木自体が枯れていく過程の中で熟成されていったものを沈香と呼んでいます。
インドシナ半島やインドネシアなどの熱帯雨林を中心に算出されており、その複雑かつ芳醇な香は個体ごとに変化があるため、「甘味、辛味、苦味、酸味、鹹味」によって香りを表現されています。
伽羅(きゃら) / アローウッド
沈香の中でも最上級のものには伽羅という名前が付けられており、非常に貴重で高価なお香の原料です。
香気だけでなく油質など様々な観点から分類されており、その香りは沈香のなかでも独特な芳香、香道で使用されるお香の主な原料として使用されている、まさに最も高価なお香の原料なのです。
漢方薬や生薬系の原料
古くからお香の原料として親しまれてきた漢方薬や生薬に分類されている原料、より良い香りを表現するために様々な工夫がされてきており、オリエンタル系のお香には欠かせない原料となっています。
桂皮(けいひ) / シナモン
シナモンとして世界中で親しまれているスパイスも、お香の原料としてかなりポピュラーな存在です。
クスノキ科の樹皮を乾燥したもので、古代エジプトではミイラ作りの防腐剤として使用されていた歴史を持ち、柔らかくもスパイシーなその香りはお香のアクセントに素晴らしい効果を発揮する原料となっています。
丁子(ちょうじ) / クローブ
香辛料としても広く使われているクローブは、チョウジノキの花蕾を乾燥させたものです。
ぴりっとした辛味調の香りを代表するお香の原料として知られており、正倉院の御物の中にも見られるため古くから日本に入ってきたスパイスであることがわかっています。
今では定番の原料となっていますが、昔は非常に手に入りづらく貴重品とされていました。
安息香(あんそくこう) / ベンゾイン
樹脂系(バルサム系)のお香に使用される原料の中でもかなりポピュラーな存在で、バニラのような甘みに厳かな香りが加わった香調、エゴノキ科の幹に傷をつけて出した樹液を乾燥させた樹脂で、タイやベトナム、スマトラ島にて産出されており中でもスマトラ島では非常に多くの安息香が産出されるため「シャム安息香」と「スマトラ安息香」という名前で区枠されています。
竜脳(りゅうのう) / ボルネオール
竜脳は熱帯雨林にあるフタバガキ科の常緑樹の樹幹にある結晶性の顆粒で、落ち着いた気品を持ちながらも、墨のようなすがすがしい香りを作る竜脳を原料にしたお香は一般的に「カンファリックな香調」と称され、現代でも衣類の防虫材として使用されていますが、その多くは安価な代用品として使用されている樟脳の香りです。
大茴香(だいういきょう) / スターアニス
中華料理の香辛料である「八角」としても有名な原料で、アニスのように甘い芳香はお香の原料として広く親しまれており、中国南部やインドシナ半島の北部に自生するモクレン科の常緑灌木になる果実を乾燥させて作ります。
山奈(さんな) / ケンペロール
中国南部やインドにて産出されるショウガ科バンウコンの根茎を乾燥したお香の原料です。
かすかに甘いジンジャー系の香りと、カンファーが混じったような香りが特長です。
植物系のお香の原料
植物の一部を使用してお香の原料としています。
乾燥して刻んだり粉末にしてお香の原料として用いることもありますが、抽出した精油として使用するのが定番。
藿香(かっこう) / パチュリー
オリエンタル系のお香に使用される原料の代表格、ウッディノートで重厚感のある香りが特徴、ベチバーや白檀などと同じくベースノートとして使用されることの多い原料で、日本では薫香様として古くから親しまれています。
オークモス
樫の木に着生するツノマタコケ、様々な香料とよく調和するため汎用性が高く、海辺をイメージしたお香や、樹木系のお香の原料として広く使われており、土っぽい独特の香りが特長です。
薔薇(ばら) / ローズ
世界三大フローラル系香料としても挙げられる代表格、主にロースダマセナとローズセンチフォリアがお香の香料として使用されており、気品と妖艶さを持った独特の香りで世界中から愛されている原料です。
すみれ/ バイオレット
花の香料は甘めのフローラルノート、葉の香料はインパクトの強いグリーンノートを持ち、芳香が強いため古くからお香の原料として親しまれている素材です。
ラベンダー
オーデコロンを中心に使用されてきた素材ですが、精神安定の効果があるハーバルノートが注目され、昨今ではお香の原料としても定番とされ始めている人気の花、北海道などでも産出されています。
クラリーセージ
アンバーグリスのような重厚感のある香りと、ラベンダーのようなハーバルノートが合わさった樹脂系の香りを持ち、お香の原料として非常に人気の高い素材。
イランイラン
古くは媚薬としても使われていた花で、ジャスミンに近いフローラルノートの香りが特徴、お香の原料としても使用されますが、エッセンシャルオイルの原料として使用されることが圧倒的に多い素材です。
バニラ
かなり甘みの強いバルサムノートが特徴の香料、バニラという素材は収穫されたままでは香りがなく、加熱や乾燥といった熟成工程を踏むことで色は緑から茶色へと変化し、バニラの香りを持つようになります。
バニラの香りにはワインのように格付けがあるのも特長です。
ベチバー
熱帯から亜熱帯にかけて生育するイネ科の植物、香料は根から採取され、ずっしりとしたオリエンタル調のベースノートとして使用される土の香りとウッディな香りが特長です。
ガルバナム
グリーンウッディな香りが特徴のガルバナムは、セリカの植物の葉や茎が昆虫によって傷つけられることで生じるゴム状の浸出物の事で、お香の原料として使われるほか、芳香剤や入浴剤にも使用されています。
オポポナックス
樹脂系のバルサムノートに、動物性香料のようなスパイシーさやセクシーさのある香りが特徴で、残香性に優れているためお香の原料として非常に優秀な素材、宗教儀式の香料としても珍重され、厳かで神秘的イメージのあるお香によくブレンドされています。
乳香(にゅうこう) / フランキンセンス
キリスト教の儀式における焚香料として広く知られており、爽やかで甘みのある樹脂系の香りが特徴、西欧にて普及しお香にも比較的よく使われている原料です。
クミン
興奮剤としても使用されるクミンはスパイシーな香りが特徴であり、スパイス系のお香に使われる原料としては非常にポピュラーな存在です、インドやイラン、モロッコ、中国、など様々な地域で産出されています。
杉(すぎ) / セダー
樹木系お香の定番原料であるセダー、日本では杉として知られていますが厳密には違います、ウッディーノートの香料としてとても重要な存在であり、インド香の原料としてかなりポピュラーな存在です。
トルーバルサム
バルサミックで甘みの強いバニラのような香りを持ち、チューインガムやアイスクリームの香料としても使用されるお香の原料です、比較的多くの香料と調和しやすいためブレンドされる事の多い原料です。
ゼラニウム
ローズを強くし、妖艶さやセクシーさをなくして少女的な香りにしたような香調を持ち、フローラル系の調合香料として広く使用されている原料です、かなり重要な香料として様々なお香に使用されています。
生姜(しょうが) / ジンジャー
スパイシー系の香り達を持ちながらも、柑橘系のようなトップノートと新鮮なウッディーノートが感じられる複雑な香りは、オリエンタル系やスパイス系だけでなく、様々なタイプのお香に配合されている原料です。
中国からヨーロッパに渡ったスパイスの中でも最も古いものとして知られています。
ジャスミン
世界三大フローラル香料の1つ、ホワイトフローラルの代表的原料であり、非常に優雅で芳醇な香りは世界中で親しまれており、お香の原料としてもかなり頻繁に使用されています。
フランスの香りとして有名ですが、現在はエジプトやモロッコ、インドといったところが主要産地です。
動物系のお香の原料
動物の生殖腺分泌物などから溶剤によって抽出された体内生成物を原料とする香料です。
近年では天然のものの希少価値が上がっており、合成香料を配合したものが一般的です。
貝香(かいこう) / バビロニア
主にアフリカに生息している巻貝「アカニシ」の蓋、熱を加える事によって芳香を発し、香りを長持ちさせる保香剤としても使用されることの多い原料で、主に練香などに使われています。
麝香(じゃこう) / ムスク
強精興奮剤や媚薬としても使用される香料で、官能的な香りが特徴。麝香という名前よりもムスクという名前の方が一般には広まっています。
オスの麝香鹿の香嚢を摘出して乾燥させたもので一頭から30g程度しか取れない貴重品、それ自体は悪臭を放ちますが1000分の1異常に薄めると、とても官能的なアニマルノートを発する。
竜涎香(りゅうぜんこう) / アンバーグリス
マッコウクジラの腸内に発生した結石を乾燥させた物、商業捕鯨が禁止されたため現在では入手が困難となっており、お香の原料としては合成香料で代用されていることが多い。